この街のニュース。この街のロック。
ストリートなんていうお洒落なものはありゃしないけど。
土曜日。アスファルトに雨がネオンの虹を咲かす。
ビジネス街の一角、地下のライブハウス「博多駅前音舗」はタイムトンネル。
30年近く前、いたいけな少年少女を人生の横道にそらさせたこの街のロック病。そのウイルスに感染し、いまだ完治しない大人達が潜んでる。
いまや愛する家族を持ち、仕事を持ち、社会に馴染み、部下もいる。
でもやめられないんだ。
止めることができないんだ。
あの騒音のなかでダンスしたいんだ。シャウトしたいんだ。
そしてそんなあんたを、そんなお父さんを見てみたいんだ。
愛情と情熱と熱気につつまれた会場は、とても気持ちがいいものだ。
「ロック」とはいえ、「歌モノ」。歌詞の聴き取りやすい音量。それはこの街のロック特有の覚えやすい歌詞のせいかもしれん。もしくは先日なくなったボ・ディドリーのリズムのせいかもしれんけど。
●POWER-BOX
日常のぐだぐだを歌う3ピース。耳馴染みのいいフレーズと、愛されるキャラクター。時折ロマンチックな空気感を作りながら、でも眼光鋭く。トップバッターらしく多少緊張気味なのも好感!
●HOBO
スーパーギタリストカワノ氏率いるブルースロックバンドだったのだけど、ボーカルが交代してR&B色が強くなった。新ボーカルのウィルソンピケットばりのアクの濃さ、くどさ、粘着さとバンドの「燃えてるんだけどクール」なバランスが色っぽい。演劇性の強さがこの先どうでるか?今回のラインナップでは完全に異色ながら、ちゃんと自分たちの演奏を聴かせ、アテンションさせるのは流石!
●Mis-Fits
嗚呼。ロックボーカルの佇まいはこうなんだ。チリチリの髪の毛と体の細さ、色っぽさ。「あ、このリフ好き!このフレーズ好き!もらってしまおー」というスタンスはまさに完全博多印のロック。ギターの役割分担やら、寡黙なリズム隊やら。マンガのキャラクター設定のようにはまったゴレンジャー。ボーカルはやっぱブルースハープだよなぁ。王子っぷりに女子ファンがニコニコ。
●博多ザ・ブリスコ
この3人編成のブリスコは初めて。クイーンに挟まれたキングジャガー。ベースがいない分、サウンドが「あまりにもずっぽりロック」にならず、ポップでゴージャスで、極上に楽しい。スピードあがりっぱなしのロックンロール。初めて聞くのに歌える曲、リフレイン。体にがっつり入ってくる歌詞。コーラス!うれしい、うれしくなる。
ダンシングキーボード!キラーパスドラマー!ジェットコースターギター!
笑ってるみんな。ケンカしたくなるロックもあるけど、これは誰彼かまわずキスしたくなるロックか?
目尻のしわにも歴史があるからあのひとは美しい。
いろんな曲がり角でどちらかを選びつづけて生きてきたロック。
ふりあげた腕が天井にあたろうとも、スピード上げてぶんまわす。
僕もがんばらなければ。
はじめて見たモノを親とおもうひな鳥のように
はじめてきいた近所の不良のニーちゃん達の出す騒音を「これが僕の音楽だ」と思ってしまって三十年。
暴走族のゴッドファーザーのテーマより
秋葉原のヒステリックなサイレンより
ぼくの街には「ぼくの街のロック」があってよかった。
この恵まれた環境が世界中にあればよかった。
写真も沢山とったのだけど、なんせ体が動いていて、クールになりきれず。
でもあの「幸せな穴蔵」のムードが伝わればうれしいです。
http://sunny.cute.tc/photo/
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