File.06 / 1976.夏 『天神コア』
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サンハウスを6回目に観たのは、福岡市の繁華街のど真ん中にある天神コアというビル(ショッピングの専門店がいろいろ入っているビル)の屋上だった。前座に、筑後市のジェイクというアマチュアバンドが出た。セカンドアルバム「仁輪加」が出てしばらくしてからのライブだったので、76年の夏頃だったと思う。
白昼にそれも野外のビルの屋上で観るサンハウスっていうのがなかなか面白かった。晴れていて心地よい天気だった。屋上には鉄製のパイプ椅子が並べられていて、観客は100人くらいだったが、なぜか外人の姿もあった。
セッティングが整うとメンバーが出てきた。最後に菊は悠然とふてぶてしく現れた。白粉をびっしりと塗り、真っ赤なルージュが艶めかしかった。この頃、菊の化粧が濃くなってきてデビッド・ボウイみたいになってきていた。
メンバーは、それぞれチューニングを始めた。菊も「あああ〜、ワン・ツー」とマイクの調子を確かめた。鬼平のシンバルのカウントから「爆弾」で幕を開けた(この日は、コンコンと音がする機材(カウベルだったかな?)を忘れたのか、シンバルを叩いていた)。「借家のブルース」「あの娘に首ったけ」が続き、菊が「はい、どうも。もしも」って紹介して「もしも」が始まった。案の定、あちらこちらでツイストが始まった。
「もしも」が終わって、間髪入れず、「どぶねずみ」が始まった。鬼平の出だしのドラミングが凄い!間奏はローリング・ストーンズの「悪魔を憐れむ唄」を彷彿させる圧巻の演奏だ。シナロケのスローテンポの「どぶねずみ」もいいが、サンハウスのスピード感溢れる「どぶねずみ」はもっといい!次は「スーツケースブルース」。菊の野太い声に鮎川の細い声が絡むハモリが絶妙だ。
そして、いきなり菊が「アイ・ラブ・ユー」って言って「アイ・ラブ・ユー」が始まった。「仁輪加」に入っていない新曲だった。8ビートの乗りがいい曲だと思った。「あて名のない手紙」に続いて「ロックン・ロールの真っ最中」が始まり、後半の怒涛のロックン・ロール・メドレーに入った。ツイストの渦がさらに大きくなった。
「ミルク飲み人形」「もうがまんできない」「地獄へドライブ」に続いて「レモンティ」が演奏された。奈良のベースと篠山のリズムギターは着実にバンドの演奏を安定させている。特に、篠山のシャカシャカ刻むリズムギターは欠かせない。
「はい、では最後の曲です。やらないか」と菊が紹介し「やらないか」が始まり、1時間弱のライブが終わった。アンコールを求める声があったが、サンハウスは再び現れなかった。
と、このようにサンハウスは余計なおしゃべりをするではなく、黙々と演奏し、さっと引っ込んでいった。当時、チューリップや甲斐バンドがよい子たちのバンドという感じで人気を博す中、そのアンチテーゼみたいな存在で悪(不良)のような仲間たちの雄にサンハウスがあった。
(続く...)
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文:なまず
参考:Captain YAMPO 著 『菊の花道』
<敬称略、文責:hakata-rock.net編集部>
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