File.07 / 1976.秋 『石橋文化センター』

サンハウスを7回目に観たのは福岡県久留米市の石橋文化センターで、76年の秋頃だった。会場はホールだから椅子席がたくさんあったけど、観客は少なかった...。でも、女性客が多かった。

ステージには幕が降りていて、その奥で誰かがギターのチューニングをしていた。待つこと10分ほどしてまもなく開演するというブザーが鳴った。「やって〜」「う〜」とかいう女の子の嬌声が聞こえた。そして、2回目のブザーが鳴り、拍手と歓声に迎えられて、幕が上がった。

オープニングは「爆弾」!菊は相変わらず、金髪の長髪。鮎川はアロハっぽいシャツにオールバック。曲の後半に、ひとり女の子がステージに上がり込み、菊のマイクを奪ってしまった。きっと、嬌声を挙げていた女の子に違いない。菊の熱狂的なファン(グルーピー?)なんだろう。

間髪を入れず「どぶねずみ」。怒涛のグルーヴだ!「借家のブルース」に続いて「あの娘に首ったけ」。イントロが美しい。そして、階段をかけおりるようなダダダというギター。踊り出さずにはいられないというビートが炸裂した。

「はい、どうも」と菊が喋ったと同時に「もしも」が始まった。なんていい曲だろう。乗りも最高!「スーツケースブルース」が終わり、菊が「あて名のない手紙」って紹介。「愛してる、君を愛している、誰よりも、あはは〜、君を愛してる」サンハウスにしては上品な歌詞だけど、佳曲だ。

鮎川が、しばしチューニング。この間、菊は何も喋らないし、場内はし〜ん(このなんとも言えない緊張感がいい)。「ぬすっと」が始まった。終わって、菊が「あぉ!」と発し、続けて「アイ・ラブ・ユー」と言って始まった「アイ・ラブ・ユー」。ステージ前ではダンスに加えて、笛も鳴り始め、「ロックン・ロールの真っ最中」が始まると興奮度が増大。サンハウスお得意の後半ロックン・ロール・ショーが全開だ。

鬼平のバスドラがズシリズシリ響くイントロで「レモンティ」が始まった。続いて「なまずの唄」。菊が「はい、では最後の曲です。やらないか」で本編が終了した。

「アンコール」の声が鳴っていたが、なかなかサンハウスは出てこなかった。もう出てこないかと思った。「アンコール」の声が鳴りやまないためか、3分ほどしてから、ようやく出てきた。

「地獄へドライブ」「キングスネークブルース」を演奏してこの日のライブは終わった。強力なリズム隊をバックに鮎川のリードギターが縦横無人に駆け回り、菊が毒と色気をまき散らし、まさにグラムロックの世界だった。ますますサンハウスにのめり込んでいく自分がいた。きょうも衝撃に打ちのめされて、博多行きの電車に乗った...。

(続く)
文:なまず
参考:Captain YAMPO 著 『菊の花道』
<敬称略、文責:hakata-rock.net編集部>