Zi:LiE-YA 2nd Album
『NATURAL BORN BOOGIE』
全曲レビュー

(文中:敬省略)

2005/6/25(サンハウスの1st『有頂天』発売日からちょうど30年後という記念すべき日!)に発売されたZi:LiE-YAの2ndアルバム。
サンハウスが全国に打って出てから30年後の柴山"菊"俊之の今の姿がこのアルバムに凝縮されている。

全収録曲12曲中、オリジナル以外のカヴァー曲(
シナロケに詞を提供した『JUNGLE JUNGLE』と、柴山俊之+SENTIMENTAL FOOLで演っていた『LOVE』のセルフ・カヴァー)は2曲だけ。
(厳密に言うと
『満月の夢』Zi:LiE-YAオリジナルではないが、ほとんど世に出ていないし、そのアレンジはまったく別物だ)
個人的には、
Zi:LiE-YA結成当初、今回はのセルフ・トリビュート的な意味合いが強いバンドであろうと勝手に思っていたし、事実、オリジナル曲の数が揃うまではカヴァー中心のライブだった。また、今まで他人に提供した曲を本人の歌で聴けるというのが嬉しかった。
(ファンとしては長年の見果てぬ夢の実現とさえ言える)
なので、正直さしてオリジナル曲が増えて行く事に期待していなかったし、果たして過去の数々の名曲にこのバンドのオリジナル曲が拮抗し得るのか?という疑問もあった。
そんな期待と不安の中、発表された1st
『電光石火』は、『ヴィンテージ・ヴァイオレンス』『CRIMINAL ROCK』などの名曲と、『DESTINY STREET』『PARACHUTE GIRL』といったオリジナル曲とがバランス良く、どちらも遜色なく並べられた好アルバムだった。
(どちらかというとオリジナルに忠実なアレンジのカバー曲に物足りなささえ感じた)
対して今回の2ndに含まれているオリジナル曲10曲は、大きく時期的に2つに分ける事が出来る。
つまり、1st発売前後から演奏されていた曲と、ここ半年〜数ヶ月で生み出された曲。
前者が
『NATURAL BORN BOOGIE』『KISSの味』『交遊サロン』『STOP BREAKIN'DOWN』『PIPE DREAM』『うれしい気持ち〜I’M SO GLAD』で、後者の比較的新しい曲群が『LOVE ROCK』『CAPRICE』『ANGEL』『満月の夢』だ。
前者の曲は初期はアレンジや演奏に荒々しさや進化の余地を感じさせる事が多々あったのに対し、後者の曲は最初からトータルして完成度が高いような気がする。
1stと2ndとの大きな違いはギタリストとベーシストが交代(g.
澄田健内藤幸也、b.穴井仁吉寺岡信芳)した事だが、この辺りも関係しているのだろうか。
このオリジナル曲での時期的な区分も頭に置きながら、アルバムを通して聞いてみるのも面白い。
なお、全12曲中、すべての曲の作詞と8曲の作曲を
が担当している。
また、アルバムジャケットは意表を突いたイラストのデザインで、あちこちにアルバム中の歌詞がイラスト化されて散りばめられている。
どの絵が何に当たるのか、、探しながら歌詞を聴いてみるのもまた一興。
では、以下に各曲についての簡単な解説を。

1. 『LOVE ROCK』 詩:柴山俊之 曲:大島治彦
最初っからいきなり直球ど真ん中勝負!のストレートで骨太なビートが炸裂する。
「ロマンチックの限りを尽くせ」
出だしの歌詞から菊の詞の世界も全開だ。
例え
ば『ほら吹きイナヅマ』『カラカラ』など、めんたいビート系の最強スタンダードと言える名曲は幾つかあるが、この曲は最新のスタンダード曲と言ってもいいほどカッコ良い出来に仕上がっている。
ドラムの大島は前作での
『夢の虜』『Heartbreaker』に続いて今回、この曲と7曲目の『ANGEL』で曲を提供している。このコンビに駄作無し!と言い切れる。

2. 『NATURAL BORN BOOGIE』 詩:柴山俊之 曲:柴山俊之
前曲から一転してヘビィなフレーズが全体を覆うタイトル・チューン。
「生まれた時からBoogie Child」
とは正に
自身そのものだろう。
割と以前からLIVEで演奏されていた曲だが、アルバム内での安定感と完成度は抜群だ。
途中からの転調もピシャリ!決まっており、これぞプロ中のプロのバンド・サウンドだ。

3. 『KISSの味』 詩:柴山俊之 曲:柴山俊之
の歌詞には強烈なフレーズ=歌詞の殺し文句のリフレインが多いが、この曲もそのパターンの曲。
何度も聴き込むうちに、
「お前のKissの味がする」
のフレーズが頭の中で鳴り続けて離れなくなる。
そのうち、きっと誰かとKissする時にだって頭に思い浮かぶようになるだろう、麻薬のような一曲。

4. 『JUNGLE JUNGLE』 詩:柴山俊之 曲:鮎川誠
シナロケ
に提供した曲をオリジナルに近いアレンジながら、よりワイルドに仕上げてある。
それは
シーナの歌の違い、そしてギターアレンジに寄る所が大きい。
印象的なリフはそのままながら、サイドギターのカッティングなどでオリジナルとはまた異なったアレンジを施している。

5. 『CAPRICE』 詩:柴山俊之 曲:柴山俊之
オリジナル曲の中で最も新しい曲の一つ。
Zi:LiE-YAにしては珍しい全体的に明るい曲調だが、違和感はなくベースの利いたサウンドが耳に心地良い。
こういうオリジナル曲が増えて行く事で、
Zi:LiE-YAの世界はイメージが固定されることなくどんどん拡がって行く。

6. 『交遊サロン』 詩:柴山俊之 曲:柴山俊之
これも
『NATURAL BORN BOOGIE』と同様、最近のLIVEになって曲の完成度が急に増した曲だ。
それは新ギタリスト・
内藤幸也の力に寄る所が大きい。
だからと言って、決して前任の
澄田健のテクニックを否定するものではない。
これらの曲には
内藤のギターがよりバッチリと合う、相性の問題という事なのだろうと思う。
(現に、
水戸華之介のバックで奏でられる澄田のギターはとても活き活きしている)
それと特筆すべきは歌詞で
「カオスがつまった宝箱 あらゆるものが産まれ出す」「ゼロとムゲンの格納庫」
なんてフレーズは唯一無二、
しか産み出し得ない。
さぞウンウンと何日も頭を捻って考えつくのかと思っていたが、歌詞はふと思い付いて30分足らずで書き上げる事もあるらしい。

7. 『ANGEL』 詩:柴山俊之 曲:大島治彦
の歴代のバンド(サンハウスSENTIMENTAL FOOLRubyBLUES LION)には男の悲しく切ない気持ちを唄った曲も数多くあるが、大雑把に切り分けるとバンド毎にその雰囲気は分かれていて、SENTIMENTAL FOOLではしっとりとした感じ、Rubyではサウンドでよりヘヴィな重ったるいアレンジになっている。
Rubyには『無頼ノ華』のようなアコースティック・アレンジの名作もあるので、あくまで大雑把な分類デス)
それから言うと、この曲は今までのバンドのどの感じとも違う、重過ぎでも暗過ぎでもないけれど、男の切実な心の辛さを良く表した佳曲だと思う。これが
Zi:LiE-YA流という事だろう。
《追記》確かな筋の情報によれば、この曲のエンディングは、Jim Capaldiの"EVE"を彷彿とさせる、らしい。

8. 『STOP BREAKIN' DOWN』 詩:柴山俊之 曲:柴山俊之
リフが特徴的なヘヴィなブギと、全ての女を取って喰いかねない菊の歌詞が絡んだ、いかにも
Zi:LiE-YAらしい曲。
曲間の所々に入る
「Stop! Stop!Stop!…Stop Breakin' Down」
というブレイクのタイミングが絶妙。ボーカルとバンドの息がピッタリと一体化してなければこの刹那の緊張感とグルーヴ感は生み出せない。
1stがスタジオで生音のままぶち込んだぜ!という感じの前のめりのバンド・サウンドに仕上がっていたのに対し、今回のアルバムは音質や各パートのノリがすごく噛み合った感じを受ける。
かって
MUTE BEATなどでスタジオ・ワークを数多くこなした内藤幸也加入の成果だろう、トラックダウンやMIXの編集作業が格段にこなれているのであろう…と勝手に想像していたが、何と今回はすべてほとんど一発録り=せーぇので全員で演奏して歌って一回で決め!という方法だったという。
つまり、このノリがステージでそのまま再現されるという事だ。バンドのメンバー構成が新生となって音が固まってきた何よりの証明だ。

9. 『満月の夢』 詩:柴山俊之 曲:柴山俊之
元々は
La ScmouneRubyからKYONが欠けた時のメンバー構成時、名乗っていたバンド名)で演っていた曲だが、そのアレンジ・雰囲気共にガラリと変わって、まったくの新曲と言っても良いような出来になっている。
元気の良い前ノリのビート・ロックで、1曲目の
『LOVE ROCK』共々、現在のZi:LiE-YAを代表するノリの良いナンバーだ。

10. 『PIPE DREAM』 詩:柴山俊之 曲:柴山俊之
このアルバム中では、ギターのリフと腹に響くベースのフレーズが上手く絡み合って独特の臨場感を産み出している曲が多いが、この曲もまたそうだ。
このアルバム中、もっとも演奏時間が長くて、且つもっとも歌詞が短い。その分、楽器の各パートの絡みが聴かせ所の曲だ。

11. 『うれしい気持ち〜I’M SO GLAD』 詩:柴山俊之 曲:柴山俊之
が今まで作詞した中でも最もハイ・テンションな部類に位置付けられる曲ではないかと思う。
『ロックンロールの真最中』並みだと思ったがあれは鮎川誠の詞だし、Ruby『クルクルParadice』[原題『クルクル・パーライフ』]は境界線越えてアッチの方までイッちゃってるし)
曲調も明るいアップテンポで、LIVEでのノリは格別だ。
また、終盤の
「嬉しい気持ちは 色々あるさ〜」
とスロー・テンポに転調して演奏ナシ・ボーカルのみになる箇所で声がまったくぶれず、そのままハイテンポに再度転調して滑らかに唄い切る所もカッコ良い。
《追記》確かな筋の情報によれば、Skip Jamesの曲やCreamを彷彿とさせる、らしい。

12. 『LOVE』 詩:柴山俊之 曲:花田裕之
かって
SENTIMENTAL FOOLが演奏し(アルバムでは鮎川誠がギター・ソロ、石橋凌がコーラスという超豪華なゲストだった!)、スマイリー原島率いるTHE ACCIDENTSがカヴァーした名曲が、三たびZi:LiE-YAの手で蘇った。
オリジナル・アレンジを基盤としつつも、よりハード&ヘヴィに。そしてど迫力全開の
のボーカルに圧倒される。個人的には今回のアレンジが最高だと思う。
サビの
「腕を切れば血が出る それが何よりの証」
のフレーズでコーラスが入らないのも新鮮。しかしその箇所ではついつい一緒にコーラスを口ずさんでしまうのは、この元曲をあまりにも何百回・何千回と聴き込んでいる性(さが)か(笑)
最後のこの曲までリードギターのフレーズとサイドギターのカッティングが聴き分けやすく、サウンドの厚みを増す大きな要因になっている点も聴き逃せない。この辺りでも
内藤幸也加入の功績を感じる事が出来る。

(文責:hakata-rock.net編集部 Y)