映画『ロッカーズ』試写
at 2003.9.11 AMCキャナルシティ13



TH eROCKERS
1981.8.30 L-MOTIONコンテスト本選大会ゲストのステージ。
右手が谷信雄。映画で使用されたものと同じレスポールを弾いている。
(PHOTO by Sunhouse中倉)

※注1:
混乱しやすいので映画中のバンドはロッカーズ、元々陣内監督がやってたのはTH eROCKERSと文中表記してます
※注2:
文中は基本的に敬省略。知り合いの人やファンの人はご了承ください


一人で映画を観に行くのは何年振りだろう?
そう、『BLUES BROTHERS 2000』以来だ。
元々人とつるむのは性に合わず、映画をひたすら観まくっていた中学時代(多い時には1年で150本も映画館で見ていた。もちろん学校はそうとうサボり気味だった)も八割方は一人で映画を観に行っていた。
その頃は今のシネコンのように入れ替え制もなかったので、『銀河鉄道999』『あしたのジョー』は朝の1回目から夜の最終上映まで終日繰り返し何度も観た。
(ただの馬鹿な暇人中学生だから出来たことだ)
角川映画松田優作『乱』『スター・ウォーズ』、もちろん『BLUES BROTERS』『爆裂都市』等も2度繰り返して観た。大学入学前まで過ごした飯塚はその頃の地方都市にありそうな2番館ばかりで、封切は少し遅れるがたいてい抱き合わせで2本(時には3本)一度に観れた。つまり2本観ても4時間近く、それを2回繰り返すと7〜8時間…俺は大学浪人時代までよっぽど暇だったのだろう。
それが今の女房と付き合うようになってからはほとんど、いや前述のブルブラ2000以外一人で映画館に行った事はない。おまけに近年映画館に足を運んだ映画と言えばほとんどポケモンシリーズゴジラ映画ハリーポッター…完璧にファミリー路線一直線だ。
(あ、石橋凌のヤクザ映画『夜桜銀次』『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』も観たな(笑))
この日、3枚我が家から送った試写会応募ハガキが俺の名前分の一枚だけ当たり、図らずも一人で映画に行くことになった。毎回せっせと俺が当選するハガキを書いて自分は外れるひさみよ、ありがとう(笑)
以上、映画とまったく関係ない私的前説終わり。

映画館に着いたのは始まる10分ほど前。ほぼ満杯だ。今日は試写だし客の反応でも一緒に見ながらゆっくり観るかと思ってたが…見事に空席がない。よくよく見渡してみると前方にぽつぽつと空いている。結局、前方左手前から2列目。図らずもかぶりつき状態(笑)
(この席のおかげ?でTVにこの模様が流れた時に後頭部が1秒ほど映った(笑))

19:00ちょうどに館内が暗転し、その日のトーク4人衆−ローカル深夜番組「ドォーモ」関連の人達登場。現役出演者の武内アナ山本華世、初代出演者の深町健次郎@Acorsticsに番組中でこの映画の取材担当の萬田美子
トークはほとんど当たり障りのない映画紹介的な内容だったが、その中でも「お?」と思ったことをいくつか。

谷さんの葬儀時に深町氏陣内監督宅に泊まり、そこで「いつかと俺の話を映画にする」と言われたらしい。
最初に映画化実現に向けて動き出したとの報が深町氏に入ったのが2年ほど前。その時のタニ役のキャスティングは何と窪塚洋介!本人はかなりやる気だったようだが、人気も出てきてスケジュールが合わず。その話は没に。タニがいなけりゃ当然この話も没に。
窪塚でもオモシロイ映画になったかも知れないが、それでは世間はあくまで窪塚主演の映画としか見ないだろう。TH eROCKERS谷さんがモデルで…なんて二の次だ。タニ役の玉木宏はあまりにもハマリ役だったので、この一旦没の経由は結果としてラッキーだったと思う。
再度映画化に向けて動き出したのが一年半ほど前。タイミング良く深町氏が地元ローカルTV局のKBC側(注:古くは1984年の里帰りロックから最近では1998年の伝説ライブまで、結構イカす企画をやってくれるTV局だ)にどうせならKBC開局50周年映画としてどうかと持ちかけ、地元が舞台ならいいでしょうとうまい具合に話が進んだらしい。
深町氏は福岡のコーディネーターで参加したとの事。「コーディネーターって何よ?」と思ったが、映画のロケ地の選定などをしたらしい。映画を見終わった後でピシャリ!のコーディネート振りを実感。
萬田美子めんたいロック当時を知らないのは当然としても、武内アナ山本華世女史TH eROCKERSの現役時代を知らないと言う。エッ、知ってる俺ってそんなに歳なの?武内アナはともかく、山本華世って俺とほぼ同い年じゃなかったっけ?


15分ほどでトークは終了し、その後すぐに本編上映。
ここであらすじ紹介してもキリがないので、あらすじを知りたい人は公式サイトを参照してクダサイ。
映画を観た感想だが、まず最初に言っておきたい。
この映画はオモシロイ!観に行って絶対損はナシ!
めんたいロック云々とか人気のある若手俳優が大挙出演とか、そんな事抜きに純粋に映画として観ても十二分に楽しめる。
でも、めんたいロックが好きなら、博多に興味があるなら更に10倍は楽しめる映画だと思う。
以下、映画を観ての感想をランダムに列挙。

陣内は初監督とは思えないほど、話の組立や見せ方が上手い。役者で苦労して蓄えてきたノウハウを爆裂させたんだろうなぁ。
タニの話をいいものにしちゃる!という気合が観てる側にも伝わってくるし、その気合は決して空回りせず、時には軽妙に時にはスピーディに観ている者を飽きさせない。映画のノリ自体が往年のTH eROCKERSそのもの、かっての陣内そのもので小気味良い。つまり見た目や歳は変わっても陣内のコアな部分は何にも変わってない訳ね。あまねく現役を名乗る中年ロッカー達にこの姿を見せてやりたいね。つーか、曲がりなりにもバンドを続けてる俺も少しは陣内を見習え(苦笑)
原作はもちろん陣内監督著の『アメージング・グレース』ということになるのだろうが、あの本からより軽快感を増した仕上がりになっている。
本の中の色んなエピソードもあちこちにうまく散りばめてある。めんたいロックを題材にしたちらし寿司のような映画(何じゃそりゃ)
大杉連の弾き語りワロタ。
上にも書いたがタニ役はホントにカッコ良い。寡黙一辺倒だけでなく若者らしい茶目っ気も上手く演じている。
TH eROCKERSを博多で観ていた当時の俺は、音よりも視覚中心に観てた上っ面野郎だったので、このバンドの中心は陣内ともう一人のギターの鶴川だろうと思っていた。いつもサングラスをかけてうつむき加減で寡黙にギターを引っ掻くはあまり目立たなかった。
(余談だが、ステージから降りても陣内鶴川はしょっちゅう女の子を何人も引き連れて親不孝や天神を闊歩する姿を度々目にした)
でも、実際のは、そして陣内の中のはこの映画のタニのようであったんだろう。監督自身であるジンを必要以上にエェカッコしいとして描かず、タニに後押しされて前に進んでいくボーカルとタニの対比も良い。
見た目もだが、タニはギターの弾き方が抜群に格好良い。のシャープでスピード感ある弾き方と初期ルースターズ大江の掻きむしるようなカッティングの仕方をミックスしたギタースタイルはカッコ良いギタリストのお手本のようだ。半年前までギター素人だったとはとても思えない。
もう一人の主役であるジン役の中村俊介は、これまた軽妙かつスピーディなステージをこなすボーカリストとして見応えアリ。ステージアクションも当時の陣内そのもの。そうとう演技指導で本人から鍛えられたんだろうなぁ。
ジンと言えば、その父親役で出演している元サンハウス浦田賢一。演技か素か分からない位の自然な頑固オヤジっぷりが素晴らしい。
この映画は全体的にミスキャストが見当たらないが、特にこのジンの親父役はハマリ過ぎ。ジミヘンの格好も妙にハマってて可笑しかったが(笑)
サンハウスナンバーがこの映画で流れるとは思わなかった。画面にはホンマモンの元サンハウスのドラマーの姿が…(笑)
ドラマー役の岡田義徳は絶対元々タイコをやってるだろう…と思ってたら、やはりバンドをやってるらしい。
ライバルバンドのボーカルがもろにモダンドールズ(笑)
やってる曲もモダン「ソーダポップ」だし。バンド名はリップオフだし(笑)
実際のモダンはホーンセクションこそなかったが、あの艶やかさ、妖しさ、華やかさはモダンの雰囲気の一面そのものだった。
…と思ってたら、後半のライブシーンはT.M Revolutionに見えたが(笑)
演じてるのが元ガオシルバーとはとても思えん。さすがプロの俳優(当たり前だ)
選曲も「バレンティノ…」「浮気なジャングル・ビート」ではなく「ソーダポップ」を持ってくる所もグー。
映画を観る前にサントラを聴いてたがイマイチ、ピンと来ない曲も多かった。
でもこれが映画のシーンにはちゃんと合ってる。さすがサウンドトラック。
同じく、サントラに入ってるバンドも何じゃこりゃ?と思うのもいくつかあったが、ちゃんとライブシーンで映えるバンドを選んであったように思う。
ここでちょっとへぇ〜な話。
劇中に挿入される「Rock'n'Roll record」でバックコーラスの女性は
 ・
 ・
 ・
毛染め剤のパパイヤ鈴木が出ていたTVCM「パパを染めちゃえ〜」と唄っていた人と同じである。
<補足>
真心ブラザース「拝啓、ジョン・レノン」のコーラスも同じである。
…って、知ってる人は知ってる、日本一パワフルな女性ボーカル、元ソウルフラワーユニオンうつみようこさんなんだけどね。
ロッカーズ自体のサウンドに関しては、な〜んの問題もなし!ROCK'N'ROLL GYPSIESが担当してるんだから当たり前!
陣内監督もサウンド面に関して全面的に安心して任せられたんだろうな。
この映画の撮影時期にROCK'N'ROLL GYPSIESが本格的に活動していてサウンドトラックを担当した事は、ホントに幸運なことだったと思う。だって俺達ファンは元THE ROOSTERSの演奏でTH eROCKERSのサウンドが聴けるんだぜ!
上に書いてるタニ役交代もKBCの50周年記念映画になったこともそうだが、この映画は色んなラッキーが重なってるような気がする。
THE ROOSTERSTH eROCKERSのサウンドがあんなに違和感なくメドレーになるとは…流石ジプシーズ
TH eROCKERSナンバーの選曲については、1時間45分という枠の中ではあれがベストかな。でも個人的には「Hey!DJ」「プアボーイ」も欲しかった。
「涙のモーターウェイ」を必要以上にジメッとせずにサラッと使ってある。物足りなくも感じるが、映画全体のバランスを考えた場合、あの曲に重きを置きすぎて暗〜い映画になっちまうより正解だったと思う。
中村俊介のボーカルは十分及第点だと思う。ヘンにモノマネしてる訳でもないのにロッカーズの音に合ってる。
個人的に終盤の演奏シーンで「嗚呼女の子達がキャーキャー熱狂してステージでメンバーが飛び跳ねてあの頃のTH eROCKERSのライブの雰囲気そのままや〜」と思ってホロッときそうになったのをここで告白しておく。
ロッカーズのライブシーンは別にTH eROCKERSの完全コピーではないが、あのエッセンスをありったけ詰め込んだものになっている。
モノマネではないので観ていてバンドとして無理や違和感がない。
ライブハウスの名前が"あの"ライブハウスだよ!!看板のネオンサインも店の雰囲気もそのままこの映画の中にパッケージした陣内はエライ!
実際のあの場所はもっと小さくて汚かったかもしれない。でもそこに籠もるバンド&客の熱気とキラキラした空間の雰囲気はまさにそのままだった。
共演者がホントに豪華。白竜伊佐山ひろ子はなわ。ジンのじーちゃんは『ショムニ』満帆商事の社長だし。
おまけにチョイ役で麻生祐未小泉今日子中井貴一八嶋智人(『トリビアの泉』の司会の人ね)、モト冬樹(ちゃんとギター弾いてくれるぜ)、王様(王様の役デス(笑))、佐藤浩市鈴木京香…それぞれみょ〜にハマってて可笑しい。
俺的にはラーメンをすするJUKE松本店長と八百屋のスマイリー原島氏がウケた(笑)
こういうゲストや協力者の名前が延々と流れるエンドロールが楽しかった。
その中にTHE PRIVESの文字が。えっ、どこで絡んでた!?俺は気付かなかった。誰か教えて!
博多の名所があちこちに登場。しかも押しつけがましくなく、これ見よがしでもなくサラッと。
先日の日記で「福岡は観光で連れて行く所があまりない」と書いたが、ゴメンやっぱいい街だよここは。
ここまでベタ誉めだが完璧なエンターティメント映画という訳ではない。
ギャグとか多少泥臭い面もあり。何となくだが『爆裂都市』石井総互監督の影響が感じられるような部分もほんのちょっとだけ。
でもそんな細かいこと吹き飛ばすパワーがこの映画にはある。
カメラのカット割りとか画面転換はとてもスマートで初監督作品とは思えない。この辺りは『爆裂都市』ほど泥臭くない(笑)
(無論、泥臭さや雑然さも含めて『爆裂都市』の魅力の一部であり、この辺りの持ち味を否定している気はない。あくまで比較論。)
細か〜いトコロでみょ〜に芸が細かい作り込みをしている。例えばライブハウスのシーンで、ジンはじめ女の子を見るロッカーズのメンバーの瞳の中の反射がハートマークになっている、とか(笑)
全編博多弁バリバリだが演じる役者のセリフにまったく違和感なし。方言指導も徹底しとるごとあるね(笑)


…書いてたら際限ない(笑)
最後にもう一度言う。
この映画はオモシロイ!観に行って絶対損はナシ!

感想はBBS


E-mail:you@sun-house.net